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毎月のように繰り返される、ある習慣がある。給料日後、銀行のATMに直行するのではなく、わざわざ提携銀行を探して回るという行動だ。目的は単純。ATM手数料の110円~220円を払いたくないという、極めて小さなこだわり。周囲からは「そんなことのために時間をかけるなんて」と言われることもある。だが、この行動を続ける理由は、単なる節約志向ではなく、何か別の心理が隠れているような気がしてならない。
正直に言えば、110円程度なら払える。銀行口座には十分な残高がある。それでも手数料を避ける理由は、「払わずに済ませられるなら、払いたくない」という、人間の根源的な心理にある。経済学者は「メンタルアカウンティング」と呼ぶ。つまり、同じ110円でも「サービス対価として払う110円」と「手数料として失う110円」では、心理的な重さが全く異なるのだ。
2026年現在、金融機関の手数料無料化の動きが加速している。楽天銀行やソニー銀行などのネット銀行では、一定条件下で時間外手数料が無料。大手銀行でも、スマートフォンアプリからの取引手数料廃止の動きが広がっている。それでも、すべてのATMが無料ではない。だからこそ、私たちは無意識のうちに、無料ATMを求めて行動するのだ。
ここで一つの疑問が生じる。110円を節約するために、15分の時間を費やす価値があるのかという問題だ。時給2000円で計算すれば、その15分は500円相当。単純に考えれば、時間の方が貴重である。
だが、実際の行動はそう単純ではない。私たちが無料ATMを探すのは、純粋な経済効率だけではなく、「小さな勝利感」を得たいという心理が働いている。手数料を払わずに済んだ瞬間、小さな達成感が生まれる。その満足感は、時給計算では測れない価値を持つ。
2026年のキャッシュレス社会では、ATMそのものの利用頻度が減少している。スマートフォン決済やクレジットカードの普及により、現金を引き出す機会は確実に減った。にもかかわらず、現金が必要な場面は依然として存在する。飲食店での割り勘、駅の売店、小規模な商店での買い物など。
そうした場面で、私たちのこだわりは生きている。「どこでお金を引き出すか」という選択は、単なる手段ではなく、自分の生活哲学を表現する行為になっているのだ。
ATM手数料を払わずに遠回りする行動は、確かに時間効率の観点からは「非合理的」かもしれない。しかし、人間の行動が常に合理的であるわけではない。小さなこだわりを大事にすることは、人生の豊かさの一部なのだ。
2026年現在、多くの人がこのジレンマに直面している。効率化を求める社会と、小さなこだわりを大事にしたい気持ちの間で。その葛藤の中にこそ、現代人の本当の姿が映っているのではないだろうか。
結論として、110円のために遠回りする自分を、完全には否定できない。なぜなら、その行動の中に、人間らしい何かが確かに存在しているからだ。