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2026年2月24日、ミラノ・コルティナ冬季オリンピックから帰国した日本選手団の映像を見て、「なんであの人たちカートに布団を載せてるんだろう?」と思った方は多いのではないでしょうか。しかもみんな揃って、エアウィーヴのロゴが正面を向くように持って歩いている——。
これは偶然ではなく、オリンピックのスポンサー契約と選手の競技サポート体制が絡んだ、なかなか興味深い話です。今回はその裏側を詳しく解説します。
まず「エアウィーヴ(airweave)」について簡単におさらいしておきましょう。
エアウィーヴは東京都千代田区に本社を置く寝具メーカーで、独自開発素材「エアファイバー®」を使ったマットレスや布団で知られています。アスリートの睡眠の質を高めることを重視した製品づくりが特徴で、2013年からJOC(日本オリンピック委員会)のオフィシャル寝具パートナーを務めています。
これまでにソチ・リオ・東京・パリと複数の五輪大会で日本選手団に寝具を提供しており、ミラノ・コルティナ2026大会でも同様のサポートを行っています。
今大会でエアウィーヴがTEAM JAPANに提供したのは、「ミラノ・コルティナ2026公式オリンピックライセンス商品」に指定された敷き布団(Futon)、かけ布団、マットレス、枕などです。
注目すべきは、これらが単なる「現地で使う用」ではなく、選手が大会前から使って体を慣らすために事前に自宅等へ提供されていたという点です。パリ大会でも同様の取り組みが行われており、「本番と同じ寝具環境で直前期のコンディショニングを整える」というコンセプトが続いています。
また、現地イタリアでは「airweave MattressFit」と呼ばれる体形測定システムを使い、選手一人ひとりに合ったマットレスの硬さをカスタマイズするサービスも提供されました。
ここが多くの視聴者が気になった核心部分です。
結論から言うと、どちらの可能性もあり得ます。
エアウィーヴの布団・マットレスは軽量かつ折りたたみ可能なキャリングバッグ付きで設計されており、持ち運びを前提とした商品です。北京大会(2022年)でも選手に「ポータブルタイプ」を提供しており、選手が現地に持参・持ち帰りするケースは過去にも存在しています。
一方でパリ大会の事例を見ると、選手村に提供した約16,000床の寝具は大会終了後、フランス軍・パリ・オペラ座バレエ学校・慈善団体エマウスなどにリユースされたことが公表されています。つまり「現地に置いてきた可能性」も十分あります。
ミラノ大会についての正式な回収・持ち帰りに関する公式発表は現時点では確認できていませんが、過去の傾向から見ると「現地使用分は現地でリユース、帰国時に新たに渡された可能性」も十分考えられます。空港でカートに載って登場するくらいコンパクトな製品ですから、どちらのパターンも物理的には不自然ではありません。
「みんな揃ってロゴが見えるように持っていた」という点は、多くの人が「あれって義務なの?」と感じた部分だと思います。
これはスポンサー企業との契約に基づいた露出活動の一環と考えるのが自然です。JOCとスポンサー企業の契約には、一般的にメディアへの露出機会を確保するための協力義務が含まれることがあります。帰国時の空港はメディアカメラが集まる最大の露出ポイントのひとつです。
「あそこのカメラが見えるところだけわざと歩かせた」という疑問についても、おそらく誘導があった可能性は高いでしょう。PR的な演出として、どの位置でどう持つかを事前に確認・指示されるのはスポンサー露出戦略として一般的な手法です。
オリンピックに限らず、スポーツ界のスポンサーシップは単に「お金を払って名前を載せる」だけではありません。スポンサーは「選手が実際に使っている姿を見せる」ことに大きな価値を見出しています。
エアウィーヴのような寝具メーカーにとって、「金メダリストが帰国時に自分の製品を抱えて歩いている」映像は、何十億円分もの広告価値があります。これはアスリートへの実質的なサポートと、ブランド価値向上の両方を同時に実現できるスポンサーシップの好例と言えます。
選手側も、単に「タダで良い寝具をもらえる」だけでなく、スポンサーの露出に協力することでスポーツ全体への支援が続くという相互利益の構造になっています。
「かなり大きいのに手荷物で持ち帰るの?」という疑問も自然です。
エアウィーヴのFuton(敷き布団)は軽量設計で、専用キャリングバッグに収納してコンパクトにまとめられます。重量は製品によって異なりますが、一般的な寝具に比べてかなり軽い部類に入ります。キャリーバッグやカートに載せやすいサイズ感になっているのも、持ち運びを前提とした設計があるためです。
ただし、荷物として機内に持ち込む場合は規定のサイズ・重量制限があるため、多くの場合は預け荷物になっていると推測されます。カートに載せているのは空港内の移動用であり、機内に持ち込んでいるわけではないでしょう。
今回の「帰国時にエアウィーヴの布団をカートに載せて歩く」映像には、以下のような背景が重なっています。
① エアウィーヴはJOCオフィシャル寝具パートナーで、ミラノ大会でも選手に寝具を提供した
② 軽量・コンパクト設計の製品なのでキャリングバッグ付きで持ち運び可能
③ 帰国後に新品を渡したのか持ち帰りなのかは公式未発表だが、過去の大会では現地リユースの事例もある
④ ロゴを前にして歩く行為はスポンサー露出目的のPR演出の可能性が高い
⑤ カメラが集まる帰国出口での露出は最大の広告効果を生む
競技で感動を与えてくれた選手たちが、帰国後もスポンサーへの義理を果たしながら歩いている——そんな「オリンピックビジネス」の一面が垣間見えるシーンでもありました。次回の大会でも同様の光景が見られるかもしれません。ぜひ注目してみてください。
参考:エアウィーヴ公式サイト、JOC公式サイト、各種ニュース報道(2026年2月)