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仕事が忙しかった昨年の秋、気がつくと自分の部屋は物で溢れかえっていました。読みかけの本、着ていない服、使わない小物…。毎日同じ環境に身を置いていると、それが「普通」だと思い込んでしまうものです。ただ、その時の私の心の状態も、部屋と同じくらいモヤモヤしていたのです。
何かを変えたい、そんな漠然とした焦燥感から、私は部屋の片付けを始めることにしました。大掛かりな計画ではなく、ただ「今日はここだけ」という小さな目標で。その時は、まさか片付けが心の状態までも変えてしまうとは、想像もしていませんでした。
片付けを進める中で、私が気づいたのは「決断の連続」という経験の価値です。一つ一つの物に対して「これは本当に必要か」と問いかける。その過程で、自分の優先順位が少しずつ明確になっていくのです。
2026年現在、ミニマリズムやシンプルライフに関する研究も増えています。環境心理学の分野では、物理的な環境が認知機能に影響を与えることが報告されており、特に視覚的な「ノイズ」の多さが集中力を低下させることが示唆されています。もちろん個人差はありますが、私の場合、この理論が当てはまったようでした。
物が減ると、目に入る情報量が減ります。これが意外と大きな変化でした。朝起きた時、部屋を見渡した時の「視覚的なストレス」が軽減されたのです。脳がいちいち周囲の物を処理する必要がなくなり、その分の認知資源を他のことに使えるようになった。そう感じました。
また、朝の準備時間も短くなりました。「着る服を選ぶ」という小さな決断が減るだけで、思いのほか心に余裕が生まれるもの。これは「決断疲れ」(decision fatigue)という心理学的現象とも関連しているのかもしれません。
片付けを続けていくと、不思議なことが起きました。部屋が整理されるにつれて、頭の中のモヤモヤも晴れていくような感覚です。これは科学的に証明されたものではなく、あくまで個人的な体験ですが、かなり明確に感じました。
仕事の優先順位が整理しやすくなり、やるべきことが明確に見えるようになった。人間関係について考える時間も、より建設的になった。部屋という物理的な環境が整うことで、思考の流れまで変わってしまったのです。
これには、いくつかの理由が考えられます。一つには、片付けという行為そのものが「達成感」をもたらすこと。目に見える成果が得られるため、脳はポジティブな反応を示します。
もう一つは、整理された環境が「安心感」を生み出すことです。心理学的には、秩序と予測可能性は人間に安心をもたらします。部屋が整理されていれば、探し物をする時間も減り、イライラも軽減されるでしょう。
ここまで書いてきて強調したいのは、これは「全ての人に当てはまる」ものではないということです。片付けが好きな人もいれば、そうでない人もいます。また、片付けをしても心の状態が変わらない人もいるかもしれません。それは完全に正常なことです。
ただ、もし今あなたが心がモヤモヤしていて、何か変えたいと感じているなら、「部屋の片付けから始める」というのは、一つの選択肢になるかもしれない。その程度の提案として、この話を受け取ってくれたら幸いです。
2026年の今、私たちは様々な情報に溢れ、決断を迫られ続けています。そんな時代だからこそ、自分の身の回りをシンプルに保つことの価値が、より大きくなっているのではないでしょうか。
部屋を片付けることで頭の中が整理される。これは科学的な証明というより、多くの人が共有している一つの「体験」なのだと思います。もし試してみようと思ったら、大きなプロジェクトではなく、「今日はここだけ」という小さな一歩から始める。それで十分です。
私の場合、その小さな一歩が、思いのほか大きな変化をもたらしてくれました。