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2026年2月8日に投開票された第51回衆議院選挙は、自民党が戦後最多の316議席を獲得する歴史的な圧勝となりました。
しかし、その圧勝ぶりがあまりにも凄まじかったために、比例代表で「候補者が足りない」という異例の事態が発生。自民党が得票数に基づいて本来獲得できるはずだった議席のうち、計13議席を他党に譲る結果となりました。
この記事では、なぜこのような現象が起きたのか、余った議席はどの党に流れたのか、そしてその仕組みについて詳しく解説します。
今回の衆院選で、自民党は比例代表で67人が当選しました。しかし、得票数で計算すると本来は約80議席を獲得できるだけの票を集めていたのです。
つまり、票は十分すぎるほど集まっていたのに、比例名簿に載せていた候補者の数が足りなかった。これが「候補者不足」の正体です。
衆議院選挙では、候補者は小選挙区と比例代表の両方に重複立候補することができます。
今回の自民党は小選挙区で249議席を獲得する大勝利。つまり、比例名簿に載っていた重複立候補者のほとんどが小選挙区で当選してしまったのです。
小選挙区で当選した候補者は、比例代表の名簿から外れます。その結果、比例代表で議席を埋めるための候補者が残っていないという事態が生じました。
これは2005年の「郵政選挙」で自民党が296議席を得た際にも同様の現象が起きており、圧勝した政党に特有の「嬉しい悲鳴」とも言える事態です。
自民党の候補者不足は、以下の4つの比例ブロックで発生しました。
南関東ブロックでは、自民党の重複立候補者のほとんどが小選挙区で勝利。比例単独の候補者だけでは議席を埋めきれず、6議席が他党に流れる最大の候補者不足が発生しました。
東京ブロックでも同様に、自民党候補者が小選挙区で次々と当選。比例名簿の候補者数を大幅に上回る議席を獲得できる票を得ていたものの、4〜5議席が他党に渡りました。
北陸信越ブロックでは、自民党は名簿に20人を載せていましたが、うち17人は小選挙区との重複立候補者で全員が小選挙区で当選。比例では5議席獲得できる票を得ていましたが、比例単独の候補が3人しかおらず、中道改革連合に2議席を譲りました。結果的に比例では中道が4議席となり、自民(3議席)を上回る形となりました。
中国ブロックでも小選挙区での勝利が相次ぎ、比例で1議席が他党に流れました。
では、自民党から溢れた13議席は具体的にどの政党に配分されたのでしょうか?
比例代表の議席配分には「ドント式」と呼ばれる計算方法が使われています。この仕組みにより、候補者不足で自民党が議席を確保できなかった場合、ドント式の計算結果に基づいて次点の政党に順次、議席が割り振られることになります。
ドント式とは、各政党の得票数を1、2、3…と順に整数で割っていき、得られた商(割り算の答え)の大きい順に議席を配分する方式です。
例えば、あるブロックでA党が100万票、B党が60万票、C党が30万票を得た場合:
- A党:100万÷1=100万、100万÷2=50万、100万÷3=33.3万…
- B党:60万÷1=60万、60万÷2=30万、60万÷3=20万…
- C党:30万÷1=30万、30万÷2=15万、30万÷3=10万…
この商を大きい順に並べて、定数分だけ議席を配分します。
通常のドント式では、商が大きい政党から順番に議席が配分されます。しかし、その政党に当選可能な候補者がいない場合、その議席は飛ばされ、次に商が大きい政党に議席が回ります。
つまり、「得票率の高い政党から順番に分配」というよりは、「ドント式の計算結果に基づいて、各ブロックで自民党の次に商が大きかった政党に順次配分された」というのが正確な表現です。
各ブロックごとに、ドント式で自民党の次に商が大きかった政党に議席が流れました。
北陸信越ブロックでは、報道によると中道改革連合が2議席を獲得しています。南関東ブロックや東京ブロック、中国ブロックでも、各ブロックでの得票状況に応じて、中道改革連合や国民民主党、参政党など、ドント式で次点に当たる政党に議席が配分されたと考えられます。
最終的な比例代表の各党議席数は以下の通りです:
- 自民党:67議席
- 中道改革連合:42議席
- 国民民主党:20議席
- 日本維新の会:16議席
- 参政党:15議席
- チームみらい:11議席
- 共産党:4議席
- れいわ新選組:1議席
これらの数字には、自民党から溢れた議席が含まれていることになります。
今回の候補者不足は自民党だけではありません。新党「チームみらい」も、近畿ブロック(定数28)で議席獲得が確実となる票を得ていました。
しかし、名簿に載せた重複立候補者の小選挙区での得票が、供託金没収の基準となる「有効投票総数の10%」を下回ったため、比例名簿の登載者と見なされず、議席を他党に譲ることになりました。
また、チームみらいは選挙期間中に比例単独で近畿ブロックに擁立した候補1人の公認を取り消していたことも影響しました。
今回の現象は過去にも前例があります。
2005年の衆院選、いわゆる「郵政選挙」では、小泉純一郎首相(当時)の下で自民党が296議席を獲得して圧勝。この時も比例代表で候補者不足が発生し、他党に議席を譲る事態が起きました。
つまり、「比例の候補者不足」は、一つの政党が異常なほどの大勝をした場合に起こる特殊な現象です。今回の自民党の316議席という戦後最多記録は、2005年の記録をも大きく上回るものであり、候補者不足の規模もより大きくなりました。
「それなら最初からもっと比例単独候補を増やしておけばよかったのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、選挙前の段階では、ここまでの圧勝を予測することは困難でした。比例名簿に多数の候補者を載せるには、それぞれに供託金(衆議院比例代表は1人あたり600万円)が必要です。当選の見込みがない候補者を大量に立てることは、資金面でも現実的ではありません。
また、2024年の前回衆院選では自民党は苦戦しており、今回ここまでの「高市旋風」による圧勝を完全に見通すことは難しかったと言えるでしょう。
2026年衆院選で起きた自民党の比例代表候補者不足をまとめると:
何が起きた?
自民党が比例代表で約80議席分の票を得ながら、候補者が67人しかおらず、計13議席を他党に譲った。
なぜ起きた?
小選挙区で圧勝し、重複立候補者のほとんどが小選挙区で当選。比例名簿に残る候補者が不足した。
どのブロックで発生?
南関東(6議席)、東京(4〜5議席)、北陸信越(2議席)、中国(1議席)の4ブロック。
議席はどこへ?
ドント式の計算結果に基づき、各ブロックで次点だった政党(中道改革連合、国民民主党、参政党など)に順次配分された。
過去の前例は?
2005年の「郵政選挙」でも同様の現象が発生。
今回の衆院選は、自民党の歴史的圧勝を象徴する多くの出来事がありましたが、「比例の候補者不足」もその一つと言えるでしょう。選挙制度の仕組みを知る上で、非常に興味深い事例です。
A. 厳密には「得票率の高い順」ではなく、ドント式の計算結果に基づいて配分されます。ドント式では各政党の得票数を整数で割った商の大きい順に議席が配分されるため、結果的に得票数の多い政党が有利になりますが、単純な得票率順とは異なります。
A. いいえ。自民党が「この政党に渡す」と指名するわけではありません。あくまでもドント式の計算に基づいて機械的に配分されます。自民党の意思は一切関与しません。
A. 得票数の計算上、自民党は比例代表で約80議席を獲得できるだけの票を得ていました。つまり、13議席分の票が「無駄」になった形です。
A. チームみらいの場合は自民党とは異なる理由です。比例名簿に載せた重複立候補者の小選挙区での得票が有効投票総数の10%を下回ったため、比例名簿の登載者と見なされず、候補者がいない状態になりました。また、選挙期間中に1人の公認を取り消していたことも影響しました。
A. そのように解釈することもできます。自民党に投じられた比例票が、最終的に他党の議席獲得に繋がるという構図です。これは現行の選挙制度の仕組み上、避けられない現象です。ただし、候補者不足が発生しなければ自民党はさらに多くの議席を得ていた可能性があり、その意味では自民党にとっては「もったいない」結果とも言えます。






